日本語タイ語通訳のジレンマ~言語の翻訳で最も難しいこととは?

Peggy_Marco / Pixabay

日本語とタイ語の通訳をしていて、最もジレンマに感じる瞬間…

それは、

話している2人の間に、「能力差」があるときです。



ハッキリ言って、

文化の壁とか、言葉の壁とか、そういうものは、「慣れ」でけっこう何とかなります。

しかし、会話中の2人の「能力」に歴然たる差がある場合…

これはもう、いかなる語学力を駆使しても、埋めるのはほぼ不可能に近い、と感じています。



たとえば、

有能な日本人Jさんと、
あまり有能でないタイ人Tさんが、
通訳を介して話していたとします。

(別に、人種的偏見があるわけではありません。タイ人スタッフの方が日本人上司よりも優秀なケースもよくあります。あくまでも「たとえば」の話です)

そして、日本人Jさんは、仕事の心構えややり方などを、丁寧に説明するのですが、

このとき、通訳が優秀であれば、「言葉」はいくらでも訳すことができます。

しかし、言葉というものは、あくまでも、ただの「文字列」でしかありません。

そこに「意味」を見出したり、「学び」を得たりできるかどうか、

というのは、脳の別の個所で行なわれることですから、語学力とは全く関係がないのです。

能力に差のある2人が会話をする…

これは、言うなれば、

ベジータとミスターサタンが「練習試合」をするようなものです。

これでは、レベルが違い過ぎて、お互い全く練習になりませんよね。

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それと同じで、話している2人の間に能力差がある場合…

「完璧に翻訳された言葉なのに、能力に差がありすぎるために、相手に意図が伝わらない」

という事態が起こるわけです。

これは、タイや中国などの発展途上国で、必ずと言っていいほど起きる現象です。

⇒【孔子の中国語は庶民に伝わらなかった?】



また、この逆、

TさんからJさんへの言葉にも、同じくジレンマがあります。

それは、タイ人のTさんが話す言葉に、「何の意味もない」というケースです。

タイで働いたことのある人は分かると思いますが、

タイ人は「長々と」言い訳をするのが好きです。

そして、その言い訳に「何も意味がない」ことがままあります。

しかし、通訳を介している以上、Tさんの意味のない言い訳も、すべてJさんには伝わります。

しかし、Jさんはそれを聞いて、

「で、結局、何が言いたいの?」

と、聞き直さなくてはなりません。

これでは、「文字列」は伝わっても、「会話は成立していない」ということになります。

私自身、通訳をしていて、

「今の無価値なセリフを、私は一体何のために、通訳したのだろうか…」

と感じることがよくあります。



つまり、延々何分ものあいだ、通訳を介して話してみたところで……

有能なJさんの言葉の真意は、有能でないTさんの耳には入りません。

同じく、Tさんの言葉は、ただの文字列に過ぎず、

その言葉を日本語に訳したところで、「何の意味もない」ということなんです。

これが、「通訳のジレンマ」です。



言葉の壁、文化の壁は、説明さえすれば、いくらでも埋めることができます。

しかし、能力差は、会話中に埋まることはありません。

埋まるとしたら、「その差を埋めるための努力」が正しく行なわれたときのみで、

それは、会話とは全く別のプロセスなのです。



逆に言えば、2国間の人間が話すときに、最も考えるべきことは…

「言語や文化の違い」よりも、

「能力差がどれぐらいあるのか」

ということに尽きる…と言えます。

たとえば、上記の例を「数値化」して、

Jさんの能力レベルを「80」、Tさんが「20」とします。

その差は「60」もありますから、Jさんはまず、レベル「20」の言葉で、日本語を話さなくてはなりません。

逆に、JさんがTさんの言葉を聞く時は、「差が60ある」ということを認識したうえで、聞かなくてはならない、ということです。

これはもう完全に、「語学・文化・会話」などとは別のプロセスなのです。

例えて言えば、

ドラゴンボールの世界で、「スカウターの数値を見て、戦うかどうかを決める」というのと、非常によく似ています。

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現在タイ語を学習中のみなさんも、いずれ、タイ語がある程度ペラペラに話せる日が来ます。

そして、互いの言葉がほぼ通じ合っている、という状態は、必ず達成できます。

しかし、問題は、その先。

「互いの能力に差がある場合、いくら完璧な翻訳をしても、両者が理解し合うことは困難である」

この壁は、越えようがありません。



逆に言えば…

「会話においては、互いの能力差を認識して、相手が最も分かりやすい言葉を選んで話す技術」

これが最も重要なのではないか、と思うわけです。

これは、私がタイで10年以上に渡って通訳に従事してきた中で得られた、最大の結論の1つです。

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【日本語とタイ語は結局のところどちらが難しいのか】


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