タイで麺料理を食べていて、
「歯ごたえがなくて、ちょっと物足りないかも…」と、感じたことはありませんか?
今回は、タイで麺料理を注文するときなどに使える、「麺かため/麺やわめ/コシがある」などに関するタイ語フレーズを、ご紹介していきます。
「固い/柔らかい」はタイ語で何と言う?
まず、基本的なタイ語の語彙として、
「固い/柔らかい」
この2つの形容詞を押さえておきましょう。
それぞれ、
●固い ケェン
●柔らかい ヌゥム
と、言います。
では、ケェンとヌゥム、この2つの形容詞に、否定や強調の組み合わせも、練習しておきましょう。
แข็ง, ไม่ แข็ง, เอา แข็งๆ หน่อย
●ケェン 固い
●マイ・ケェン 固くない
●アオ・ケェンケェン・ノォーイ
固いのをください
นุ่ม, ไม่ นุ่ม,เอา นุ่มๆ หน่อย
●ヌゥム 柔らかい
●マイ・ヌゥム 柔らかくない
●アオ・ヌゥムヌゥム・ノォーイ
柔らかいのをください
↓音声はこちらから
「固いのをください」と言うときは?
これらの表現のうち、最も重要なのは、3つ目の「依頼」の表現です。
文末に「ノォーイ」や「ハイ・ノォーイ」を付けると、
「~してくれませんか?」
という、丁寧な依頼文になります。
またこの時は、形容詞を2回繰り返すことが多いです。
そのため、
「ケェン(固い)/ヌゥム(柔らかい)」はそれぞれ、
●ケェンケェン
(固く・固いやつ)
●ヌゥムヌゥム
(柔らかく・柔らかいやつ)
と、なります。
「固さ」に対する価値観の違い
以上は、あくまでも「語学」としての側面です。
しかし、私たちが外国語を話すときは、「言語」そのものよりも、
さらにもう一歩、深く踏み込んで、考えなければならないことがあります。それは…
「現地の人は、そもそも、どういう言い方をするのか」
というポイントです。
今回の「固い/柔らかい」のテーマで言えば、タイの人は一般的に…
「柔らかいものは美味しい、
固いものは美味しくない」
という価値観を持っています。
そのため、タイでは少なくとも20世紀ごろまでは、
「麺の歯ごたえ」という概念は、ほとんど無い状態でした。
これは、マジな話です。
私が以前、実際に耳にした、次のようなエピソードがあります。
フランスパンを酷評していた中流のタイ人女性
当時、タイ~ラオスの国境を陸路で越える旅行がメジャーになり始めた頃、
タイ人の中流風の女性が、ラオスからタイに戻ってきて、こんなことを言っていました。
「ラオスは貧しいから、パンが固いのね。
タイのパンは、柔らかくって本当に美味しいわ!」と。
ラオスの名誉のために一言付け加えておくと…
ラオスはフランスの植民地だったため、固くて長い、いわゆる
「フランスパン(バインミー)」
が、広く普及しています。
要は、このタイ人女性は、
フランスパンという存在を知らなかった、ということ。
そして、そのために、
「ラオスは貧しい
→ラオスのパンは固い
→ラオスのパンはおいしくない」
という、極めて偏狭な発想と発言をしてしまった、ということです。
こういうのは、
タイの新興中流階級にありがちです。
「知らない」というのは、
本当に恥ずかしいことですね。
こんなにおいしいのに…
自動翻訳で訳してみた結果…
今回の記事でご紹介している「麺かため」のテーマは、
上記のタイ人女性のセリフに、全て集約されています。つまり…
「一般のタイ人は、固いものは美味しくないと思っている。」
ということです。
そのため、「コシがある/弾力がある/歯ごたえがある」
こうした意味を表すタイ語は、ありません。
試しにオンライン翻訳で「歯ごたえ」と日本語で入力したら、
「噛んだ時、歯に当たる感触」
という、極めて機械的なタイ語の直訳文が表示されました。
要は、タイ語では、「歯ごたえ」というものに、
何らプラスの価値を見出していない、ということなんです。
これでは、「歯応えプリーズ」という文を、タイ語に翻訳しようがありません。
タイでもようやく「カタ麺」が認められ始めた
21世紀、タイで空前の日本食のブームが始まって、
「麺にはコシがあったほうがいいらしい」
ということが、ようやくタイでも、少しずつ認知され始めました。
しかしそれでも、当時この概念を理解できていたのは、都市部の学生や、一部の知識層、富裕層だけです。
世間一般のタイ人にとっては、今なお「固いものは美味しくない」という認識なんです。
異文化理解とはこういうこと
今回の記事では、「固い」や「固くしてください」というタイ語表現を、一応、ご紹介しています。
でも、そのタイ語の意味を理解できるタイ人は実は少ないかもしれない、という危惧があるんです。
なぜなら、
いくら完璧なタイ語であっても、そのタイ語で表現された概念を、相手のタイ人が理解できないことがあるからです。
↑これ、けっこう重要なポイントなので、もう一回言っておきます。
「完璧なタイ語を話しても、タイ人に伝わらないことがある」
そして、話は若干飛躍しますが、つまりはこのことが、「異文化理解」ということになります。
最も通じやすいタイ語のフレーズ
以上のことを踏まえた上で、
「タイのラーメン屋で、カタ麺を注文したい!」
という時、タイ語でどのように言えばいいのか。
若干長いタイ語文ですが、「カタ麺党」の人にとっては、重要なフレーズですので、
タイ語文全文と音声を、ご紹介しておきます。
ลวกเส้นแป๊บเดี่ยวก็ได้นะคะ,เราชอบกินแข็งๆค่ะ
「ロヮック・セン・ペップディアオ・コダーイ・ナカァ、
ラオ・チョォープ・ギン・ケェンケェン・カァ」。
日本語に訳すと、
「麺のゆで時間は、ほんのちょっとでいいです。私は、固い麺が好きなので。」
という意味になります。
つまり、「固さ」という主観的な希望をリクエストするのではなく、あくまでも、
「ゆで時間」という、物理的、数学的、客観的な内容でリクエストする、ということです。
これならタイ人の店員も、
「じゃあ、ゆで時間1分半のところを、40秒にしておいてあげるわ♪」
と、円滑に対応できます。
ぜひ、タイのラーメン屋でも、カタ麺を注文してみてくださいね!
なお、タイ語で「ロヮック」というのは、「ゆでる/ゆがく」という意味の動詞です。
ついでに、覚えておきましょう。
まとめ
いかがでしたか。
今回は、「固い/柔らかい」に関するタイ語フレーズを、ご紹介してきました。
↓音声はこちらから
แข็ง, ไม่ แข็ง, เอา แข็งๆ หน่อย
●ケェン 固い●マイ・ケェン 固くない
●アオ・ケェンケェン・ノォーイ
固いのをくださいนุ่ม, ไม่ นุ่ม,เอา นุ่มๆ หน่อย
●ヌゥム 柔らかい●マイ・ヌゥム 柔らかくない
●アオ・ヌゥムヌゥム・ノォーイ
柔らかいのをください
そして、これらを知識として踏まえた上で、
タイのラーメン屋で「カタ麺」を注文したいとき、どのようにタイ語で注文すればよいか、ということに関して、
「麺の茹で時間短めでお願いします」
というフレーズをご紹介しました。
実際にタイのラーメン屋さんで、
「カタ麺」を注文したいときは、
↑お店でこのボタンを押して、タイ人の店員さんに、実際に聞かせてみてください。ลวกเส้นแป๊บเดี่ยวก็ได้นะคะ,เราชอบกินแข็งๆค่ะ
ロヮック・セン・ペップディアオ・コダーイ・ナカァ、
ラオ・チョォープ・ギン・ケェンケェン・カァ「麺のゆで時間は短めでお願いします、私は固い麺が好きなのです。」
きっと、「ああ、この日本人は、固い麺を食べたいのね」ということが、相手のタイ人にも伝わって、
お望み通り、カタ麺を注文することができるはずです!
なお、「全然通じなかったじゃねーかよ!」というときは、是非コメント欄から、ご意見をお寄せください。
さらに通じやすいタイ語表現をご紹介できるよう、改善努力していきますので。
それではまた。