「せっかく」っていう言葉、タイ語でなんというか、ご存知ですか?
こういう日本語独特の表現って、外国語に訳すのが難しいですよね。
そこで今回は、「せっかく買ってきてあげたのに!」というようなニュアンスを表す、タイ語のフレーズについて、ご紹介していきます!
タイ語で「せっかく」はなんという?
実はタイ語にはちゃんと、「せっかく」と訳すことのできる単語があります。
タイ語で「ウッサー」と言います。
例えば、
あなたが外出から帰ってくる時、帰りにショッピングセンターに寄って「ピザ」を買ってきたけれど、家族はすでに、ご飯をお腹いっぱい食べ終えていた…という場合。
ウッサー・スー・マー・レェーオ
(せっかく買ってきたのに!)
と、言います。
スー・マー・レェーオ
は、「買ってきた」という意味です。
スー 買う
マー 来る
レェーオ 完了
…です。これはそのままの語順だから、解りやすいですよね。
そして、この文頭に「ウッサー(せっかく)」をつけると、
ウッサー・スー・マー・レェーオ
(せっかく買ってきたのに!)
という意味になります。
タイ人は、買ってきた食べ物であっても、非常に粗末に扱いますから、「せっかく…」のフレーズは、ぜひ覚えておきましょう。
もう一つ、例を挙げてみます。
例えば、
あなたが2時間以上かけて仕上げた書類を、満を持して担当者に渡しに行ったら、担当者に「あぁ、この書類なら、先日〇〇さんが持ってきてくれたから、もういいのよ」と言われ、他人の業務とかぶってしまっていた…というような場合。
ウッサー・タム・ハイ・レェーオ
(せっかくやってあげたのに!)
…と言います。
これも、「ウッサー」をはずした普通の文章では、
タム する
ハイ あげる
レェーオ 完了
…ですので、これも、そのままの語順ですよね。
タム・ハイ・レェーオ
(してあげました)
ウッサー・タム・ハイ・レェーオ
(せっかくやってあげたのに!)
要は、普通に文章を作って、その文頭に「ウッサー」をつければ、
「せっかく○○したのに!」
という意味になる、というわけです。
構文としては、すごく簡単ですよね。
タイ語の「せっかく」の使い方は?
さて、重要なのは、ここからです。
日本語の「せっかく」と、タイ語の「ウッサー」は、どう違うのか。
こういうことを考えていくことが、「異文化理解」につながります。
これを知るために、覚えておくべきタイ語の単語として、
「ウッサーハガム」
という言葉があります。
これは、「工業」という意味です。
タイの会社で働いたことがある人は、おそらく、聞いたことがあるのではないでしょうか。
工業団地のことは、タイ語で
「ケーッ・ウッサーハガム」
「ニコム・ウッサーハガム」
と、言います。
「ウッサーハガム(工業)」は見ての通り、頭に「ウッサー」が付いていますよね。
「工業」と「せっかく」が同じ語源だというのは、なかなか興味深いことです。
つまり、こういうことです。
タイ語で「工業」を意味する「ウッサーハガム」という言葉は、その成り立ちとして、
「ウッサー」が元になっていますから、
- 苦労してするもの
- 努力してするもの
- わざわざするもの
というようなニュアンスがあります。
要は、タイ語の「ウッサーハガム(工業)」というのは、
「喜んでやってるんじゃない。わざわざ、苦労して作ってるんだ」
ということです。
いかにも、南国のタイ人らしい感じがしませんか?
ものづくりに対し、「喜び」を見出している日本人とは、語の成り立ちからして、根本的に、「工業」に対するものの考え方が違うということです。
日本語の「せっかく」とのニュアンスの違い
さて、なぜ私が長々と「ウッサーハガム(工業)」の話をしたかというと、
これは、「ウッサー(せっかく)」の、タイ語会話での使い方にも関連するからです。
先述の通り、タイ語の「ウッサー(せっかく)」には、
「わざわざ、苦労して、○○する」というニュアンスが込められています。
そのため、日本人が使う「せっかく」とは、微妙にニュアンスが食い違うことがあります。
例えば、次のようなケースです。
頭のいい子が、通学や家庭の事情などで、公立の小さな学校にしかいけない…というような場合。 日本語では、
「せっかく頭いいのに」なんて言いますよね。
でもこれ、タイ語に直訳しても、おそらくタイ人には通じません。
言われたタイ人は、「きょとん」とするはずです。
もう一つの例を見てみましょう。
例えば、村一番の美人の子が、くだらないヤンキー風の男に捕まって、のちに結婚し、そのヤンキーは全然仕事しないクズのような男で、彼女は結局、一生苦労することになってしまった…というような場合。
これも、ニュアンス的には先程と同様です。日本語では、
「せっかく、こんなに美人に生まれてきたっていうのに…」
なんて言ったりしますよね。
やっぱりこれも、タイ語に訳すと今1つしっくりこないんです。
要は、タイ語の「ウッサー(せっかく)」には、
「行為や苦労」が伴う
ってことなんです。
それは、「工業」という言葉と語源が同じことからも明らかです。
つまり、
「せっかく、こんなに美人で、頭が良く、上品な家庭に生まれてきたのに」
というように、「生まれや運、先天的なもの」に対しては、
タイ語の「ウッサー(せっかく)」は、あんまり使わない、っていうことなんです。
まとめ
今回は、「ウッサー(せっかく)」というタイ語を取り上げ、
その使い方と、日本語の「せっかく」とのニュアンスの違いなどについて、ご紹介してきました。
要は、「苦労して、わざわざ、○○する」というのが、タイ語の「ウッサー(せっかく)」のニュアンスだということです。
また、タイ人は、食べ物を非常に粗末にしますので、
あなたがせっかく、みんなのために買ってきた差し入れを、だれも食べない…なんていう残念な場面は、しょっちゅうあります。
そのため、
ウッサー・スー・マー・レェーオ
(せっかく買ってきたのに!)
というフレーズは、日常生活では、わりとよく使いますから、ぜひ、覚えておきましょう!