読者からの質問で意外と多いのが、
「タイ語の他には、どんな言語を勉強しておくといいでしょうか?」という質問です。
こういう質問が出てくる背景には、タイという国の、地政学的な要因が関係していると思われます。
タイは、日本のように周囲から隔絶された島国ではなく、常に大量の外国人が出入りを続けている、という歴史があります。
そのため、タイにいると、普段から日常的に外国人を見かけることになり、
タイ人も、タイに住んでいる外国人も、
「タイ語以外にもう1個言語ができたほうがいいのかな?」という思いを、抱きやすいのだろうと思います。
なかでも、ここ数年タイで注目されている外国語が、今回のタイトルに掲げている、中国語なんです。
そこで今回は、
「中国語は本当に学ぶ価値があるのかどうか」ということについて、考えていきたいと思います。
タイで本当に中国語は注目されているのか
現在中国語は、タイで最もトレンディーな外国語、という位置づけです。
タイの中学校・高校では、中国語を選択科目に設定している学校が増え続け、
「中国語ができた方が給料が高くなる」
「中国語のガイドができれば仕事に困らない」
などの都市伝説(?)が生まれるに至っています。
そのような背景があるためか、
「中国語ができたほうがいいかも?」と考える人が、私の周囲でもチラホラ現れているのですが、
私はあえて、
「中国語を勉強する必要はない」と断言しています。
中国語を勉強する必要はないと言える3つの理由
私がそのように考える理由は、大きく分けて3つあります。
理由1:今後中国本土は人間が住めなくなる
中国国内では、むこう100年、人間は住むことができません。
ニュースなどで連日報じられているとおり、今や中国国内は、人間がとても暮らせないほどの、環境汚染が進んでいます。
安心して呼吸もできない、水も飲めめない、食事もできない、という恐ろしい状態です。
そして、この事実がタイ人にもバレてしまった、興味深いエピソードがあります。
かつて、中国人に大人気の観光地であるチェンマイで、
「あなたはなぜ、チェンマイが好きなのですか?」
というアンケートが、中国人旅行者に対して行なわれたことがありました。
このアンケート、1位の回答は一体何だと思いますか?
なんと、「新鮮なフルーツと野菜が食べられるから」が断トツ1位なんです。
これって要は、
「中国本土では新鮮な野菜やフルーツを食べられない」
ということを意味しています。
つまり、中国人が大量に海外旅行に出かけている背景には、豊かになった云々よりも、「中国本土ではもうとても人が暮らせない」という事情があるんです。
中国語を使う機会は減り続ける
中国大陸で人が住めない以上、
私たちが中国本土を訪れて、中国に住んでいる中国人と中国語で会話する、という機会は、今後ますます低くなっていきます。
つまり、中国語を覚えたところで、健康上の理由から、現地に行くことが困難なんです。
そうなると、私たちが中国を使う機会が、もしあるとすれば、
「海外に出ている中国人と話す」
というのがもっぱらの目的になります。
しかし、ある程度の知識層であれば、中国人も普通に英語を話すことができます。
だったら、英語を話せれば充分だと思いませんか?
「外国に出て来ている中国人のために、わざわざこちらが中国語を勉強する必要なくね?」
というのが、私の考えです。
理由2:華僑は現地語が話せて当然
中国語有望論の1つとして必ず挙げられるのは、
「中国人は世界中に住んでいるから、中国語を話せれば、世界中で通用する。
だから、中国語ができたほうが有利」
という意見です。
しかし、これもかなりクエスチョンマークです。
外国に住んでいる中国人(いわゆる「華僑」)は、すでに何世代にもわたって現地で根を張って生活しているため、現地語を何不自由なく操ることができます。
タイに住んでいる華僑は、タイ人と同じようにタイ語を話すことができます。
同様に、アメリカの華僑は英語を話し、フランスの華僑はフランス語を話します。
こうなると、「華僑と話すために中国語を勉強する」というのは、
動機としては甚だ「薄い」と言わざるを得ません。
もしも、アメリカの華僑たちとコミュニケーションを取りたいのなら、勉強すべきは、中国語ではなく、英語です。
中国語よりも、英語を勉強してペラペラになった方が、よっぽど役に立ちます。
理由3:商売の質が落ちる
現在のタイで、中国語が最も必要だと言われている業界は、ツアー業界です。
「年間数百万人とも言われる中国人旅行者を集客できるから」というのが、もっぱらの理由です。
でも、これも、メリットばかりではありません。
ご存知のとおり、中国人のマナーの悪さは世界でも有名で、タイの旅行業者の中にも、「アンチ中国人観光客」という人が大勢います。
彼らは、「西洋人だけを相手にしていれば充分食えるんだから、今さら中国人を集客して、旅行者の質を落とす必要はない」と考えているんです。
事実その通りで、ツアーやホテルなど、中国人をターゲットにし始めると、サービスの質が確実に落ちます。
最近のチェンマイでよく言われているのは、
「西洋人をターゲットにしたゲストハウスには、世界中から客が来る。しかし、中国人をターゲットにした宿には、中国人しか来ない」
ということです。
ちょっと想像してみてください。
ゲストハウスの玄関に、ドイツ語が書かれたドイツ人宿と、中国語が書かれた中国人宿。
あなたは、どちらの宿に泊まりたいですか?
少なくとも、「静かに寝たい」というニーズがあるなら、明らかに中国人旅行者が多いような宿には泊まらないはずです。
中国語を習得している業者も、中国人が好きだからではなく、むしろ「本当は嫌いだけどお金のために仕方なく我慢している」というのが、実際のところなんです。
仮に、タイ人の旅行業者が、中国語をマスターして、中国人を集客できたとしても…、
客の質は確実に落ちます。
客の質が落ちると、サービスの質、仕事の質も、それに伴って必ず低下していきます。
すると、その業者は、
「中国人以外のほかの客層が来てくれない」
「中国人が来てくれるからかろうじて食べていける」
という残念なレベルにまで、仕事の質が落ちてしまうことになります。
こうなると、「儲かるから」という表層的な理由だけで、中国人相手の商売を始めるのが、果たして良いことなのかどうか…かなりクエスチョンマークだと思います。
中国語の唯一のメリットは、台湾人と話せること
今回、中国語を学習するメリットはあまりない、という話をしていますが、
そんな中国語にも、たった1つだけ、メリットがあります。
それは、
中国語ができれば、台湾人と話せる
ということです。
台湾の人はおしなべて親日家で、大陸とは違い、性格も非常に穏やかです。
あなたがもしも中国語を話すことができれば、台湾の人と親密になることができます。
そのため、もしもあなたが今、中国語を勉強しているのなら、
中国人と話すためではなく、台湾人と話すために、中国語のスキルを生かしていくようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか。
健康上の理由から、汚染大国である中国本土へあなたが行ける機会は、今後ますます減っていきます。
また、中国本土以外では、英語が話せる中国人と、英語で会話すれば、あなたが中国語をマスターする必要はありません。
これはタイ語ブログなので、話をタイに戻すと、
タイでも、中国語は全く必要ありません。
先述の通り、タイ在住の中国人は、みなタイ語を話すことができるからです。
そうなると、今回のテーマ、「中国語を勉強すべきかどうか」という問題は、
結局のところ、
「そもそもあなたは中国人と交流したいのかどうか」という問題に集約されます。
「マナーの良い中国人なら交流したい」・・・全くその通りです。
であれば、あなたが目を向けるべきは、中国人ではなく、台湾人です。
中国語は、15億人と話せるからメリットがあるのではありません。
台湾人と話せるから、メリットがあるのです。
もしも現在、あなたが中国語を勉強しているのなら、
今後は、「台湾語」と呼んだほうがいいかもしれません。
台湾バンザイ!
中国人と話すために中国語を勉強するのではなく、
台湾人と話すために台湾語を勉強しよう。