タイで仕事や活動していると、
「タイ人って、『ホウレン草(報告・連絡・相談)』を、全然しないよなぁ…」
と、感じますよね。
今回は、なぜタイ人が「ホウレン草」が苦手なのか…というテーマについて、お話をしていきます。
また、タイに関係のない人にとっても、「ホウレン草が苦手な人の心理」に関して、参考にしていただければと思います!
『ホウレン草』とは?
まず、知らない人のために、『ホウレン草』について少し解説をしておくと…
『ホウレン草』というのは、「報告・連絡・相談」の、それぞれの頭文字を取った言葉です。
日本では、仕事や活動などの現場で、昔から言われている、いわば「仕事のエッセンス」のようなもの…
それが、『ホウレン草』です。
タイ人がホウレン草を苦手が3つの理由
そして、タイの人たちは、この『ホウレン草』が、根本的に「大の苦手」です。
「ホウレン草をする」という発想自体がない、と言っても過言ではありません。
むしろ、「そもそも、そんなものは必要ない!」と、カタクナに思っているフシすらあります。
では、なぜタイでは、「報告」や「相談」というものが、ここまで軽視されてしまっているのでしょうか。
大きく、3つの理由が考えられます。
1.怒られるのを恐れる
タイ人には、「他人から叱られることを極度に恐れる」という特徴があります。
まぁ、「叱られたくない」という心理は、日本人にもありますから…
「タイに特有」ってわけではありませんが、でも、タイの「叱られ恐怖」は、日本に比べて、はるかに極端です。
これは、「育児のやり方」に関係があります。
タイ人の育児
タイ人の育児では、基本的に、「子供を頭ごなしに怒鳴りつける」というやり方が、日常的に行なわれています。
あなたも、バンコクのショッピングセンターや地下鉄などで…
子供を大声で怒鳴りつけているタイ人の母親を、目撃したことがあるのではないでしょうか。
これはいわば、タイの「日常風景」です。
なかでも、タチが悪いのは…
せっかく子供が正直に罪を白状したのに、頭ごなしに怒鳴りつけられてしまう、というケースです。
正直な子に激怒する…これは、「親として」絶対にやってはいけないことです。
日本だったら、親や教師は、子供に対して…
と言って、教えますよね。
日本の子どもは、このようにして、
「隠し事をするよりも、正直に言った方が、傷口が浅くて済む」
ということを、覚えていくわけです。
(まあ、最近の日本の子供はどうか知りませんが…)
正直者が怒られる文化
でも、タイ人の大人は、子供に対して、
「怒らないから、ちゃんと本当のことを言いなさい」
なんてことを、あんまり言いません。
そのため、タイでは…
「せっかく、勇気を出して、正直に言ったのに、激怒される」
…なんてことも、しばしばです。
そして何も言わなくなる
こうなると、子供は、
「嘘をついても、正直に言っても、結局は激怒される…
だったら、何も言わず、黙ってたほうが、よっぽどマシじゃね?」
って、考えちゃいますよね。
これが、タイ人の
「秘密主義」
「報告しない主義」
の最大の原因ではないか…と、私は考えています。
2.「目上に遠慮する」という文化
また、タイには、「目上の人に遠慮する」という文化があります。
「遠慮」のことは、タイ語で「ゲンヂャイ」といいます。
ただし、タイ語の「ゲンヂャイ」は、日本語の遠慮とは、似て非なるものです。
「เกรงใจゲンヂャイ」の意味とは?
辞書をひらくと、
「เกรงใจゲンヂャイ」の訳語は、一応「遠慮する」ってことになっています。
しかし…
タイ語の「ゲンヂャイ」と、、日本語の「遠慮」とでは、ベースとなる意味が、全く違います。
タイ語の「ゲンヂャイ」の意味を、かなり大雑把に言い切ってしまうと…
「目下の者は、目上の者に、気軽に話しかけてはならない」
これが、タイ語の「ゲンヂャイ」の概念です。
「遠慮させないこと」が先決
そのため、例えば、タイの現地法人などで、日本人の管理者は…
「何かあったらすぐに報告して欲しい」
「何でも気軽に相談してほしい」
と、考えています。
でも、タイ人の部下の部下にとっては、
「上司に気軽に話しかける」という発想や文化自体が、そもそも無い…ってことなんです。
ですので、「何でも俺にすぐ報告しろ!」ということを教える前に、まずは…
「俺に遠慮をするな」
ということを、しっかり伝えないといけない…ってことなんです。
これは、タイに直接関係のない人も、うなずけるのではないでしょうか。
要は、相手との心の距離がある状態で、「何でも報告してくれ」なんて言ってみても…
そんなのは、「無理な話」だということです。
ここで一度、タイ語の「เกรงใจゲンヂャイ」の音声を、練習しておきましょう。
↓音声はこちらから
ゲンヂャイ
⇒遠慮する
●ไม่ต้อง เกรงใจ,
マイ・トォン・ゲンヂャイ
⇒遠慮しなくても良い
●ไม่ต้อง เกรงใจ นะคะ
マイ・トォン・ゲンヂャイ・ナカ♪
⇒遠慮しないでねっ♪
3.仕事を増やしたくない
タイ人が、仕事や活動の現場で「ホウレン草」を嫌がる、もう1つの理由は…
「自分の仕事が増えてしまう恐れがあるから」です。
例えば…
あなたのタイ人の部下が、製造ラインを管理していて、製造ラインに、問題が発生したとします。
もしもここで、部下があなたに、そのことを報告したら…
あなたは当然、「何が問題なの?いつ復旧するの?」のようなことを、質問しますよね。
タイ人は、こういう質問が、
大っ嫌いです(笑)
タイ人にしてみれば、
「えっ?俺のせいじゃねぇし。そんなに気になるなら、お前が自分で見てきたら?」
…ってなもんです。
つまり彼らは、
「上司から、根掘り葉掘り、質問されるぐらいなら、何も報告しない方がマシ」
…って考えるんです。
発想を転換しよう
ですので、ここで1つ、発想を変えてみましょう。
タイ人があなたに「ホウレン草」をしてくれないのは、タイ人に問題があるのではなく…
「あなたに責任がある」ということです。
要は、あなたが、タイ人にとって、「報告をしたくないタイプの人間」…ってことです。
タイ人の性格を変えようとしても、そう簡単に変わるものではありません。
だったら、「なんでホウレン草をしてくれねぇーんだ!」などと、憤慨するよりも…
あなたが「報告をしたくなるタイプの人間」に変わったほうが、はるかにラクだと思いませんか?
責任を追及しない&怒らない
基本的にタイ人は、
「叱られること」と、
「問い詰められること」
を、極度に嫌がります。
そのため、タイ人があなたに『ホウレン草』をしてくれない場合…
ひょっとしたら、あなたが普段から、タイ人を「叱りすぎ」「問い詰めすぎ」なのかもしれません。
あるいは、あなたが、
「叱るタイプに違いない」
「問い詰めてくるに違いない」
って、タイ人に思われている…ってことです。
「稼ぎたくないのか」はNG
私がこういうことを言うと、必ず、次のような反論をしてくる人がいます。
稼ぎたいなら、ホウレン草ぐらいキチッとやってくれないと困る」
…という理屈です。
まぁ、間違ってはいないんですが、こういうことを言う人は、重要なことを忘れています。
それは…
「タイ人の部下のお陰で、あなたも稼がせてもらってるんでしょう?」
ってことです。
郷に入りては郷に従え
要は、あなたの生活は、タイ人部下たちの働きによって成り立っているわけで、しかも…
タイ現地法人ともなれば、あなたのほうが「よそ者」です。
極端な話、職場のタイ人全員が辞めても、彼らは困りません。
困るのはむしろ、あなたのほうです。
「郷に入りては郷に従え」
…タイ人がやりやすいように、あなたも彼らに合わせてあげる必要があります。
『ホウレン草』が苦手な人に、「ホウレン草の大切さ」なんて教えても、あんまり効果はありません。
それよりも、あなたが、「報告したくなるタイプの上司」に変身することの方が、よっぽど重要です。
少なくとも、タイにおいては。
まとめ
いかがでしたか。
今回は、タイ人が『ホウレン草(報告・連絡・相談)』が苦手な3つの理由として…
目上の人に「遠慮」して、気軽に話しかけない文化である。
2.
幼児体験から、叱られたり、問い詰めらたりするのを、極度に恐れる。
3.
責任の追及を恐れ、自分の仕事を増やしたくないと考える。
以上3つのポイントについて、ご紹介してきました。
大切なのは、あなたがこれらを知った上で、「タイ人に好まれる上司」になることです。
以上の内容を、あえて、一言でまとめると…
「愛する我が子に接するのと同じように、相手にも接する」
ってことになります。
仕事や活動をしている人は、ぜひ、参考にしてみてくださいね!
重要語句
เกรงใจ
ゲンヂャイ
(遠慮する)
ไม่ต้องเกรงใจนะคะ
マイトォン・ゲンヂャイ・ナカッ
(遠慮しないでねっ♪)
↓↓音声はこちらから↓↓