【ベンガル語数字覚え方】インドの1から100までの数詞に規則性はあるのか~インド人が計算に強い理由

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「インドの数字は1から100まですべて不規則」

というのは、インド好きの間ではよく知られた話です。

そのためインドでは、数字を覚えるのがかなり大変です。




たとえば、

どこか外国の言葉で、20という数字と4という数字を知っていれば、

「24」を何と言うのかは、だいたい予想がつきますよね。

「20と4を普通に並べれば、24になる」

というのが、一般的な数え方のルールだからです。

インドの数の数え方

日本語でも英語でもタイ語でも、おおむねどこの言語でも、数の数え方はそのようになっていますが、

しかし、インド亜大陸では、この常識は通用しません。

24は、20とも4とも違う、別の形をしています。

25も同様で、しかも、24ともまた別の形です。

つまり、インドでは、1から20までを覚えたからと言って、

21以降がすぐに言えるようになるわけではない、ということなのです。

そのため、インドの外からやってきた外国人は、

1から100までの数字を、「1つずつ」覚えなくてはなりません。

そこに規則性があるのか、ないのか、

そして、なぜそもそも、インドではこんな数詞になっているのか、

というのが、今回のテーマです。

ベンガル語の1から50

なお、私がバングラデシュが好きなので、今回の記事はバングラデシュの「ベンガル語」で例示していますが、

ヒンディー語でも、ウルドゥー語でも、基本は同じです。

要は、「インド亜大陸の諸言語はだいたいこういう数え方をする」ということですから、

ヒンディー語にもウルドゥー語にも、応用できます。

では、見ていきましょう。

ベンガル語1-10

1 ১ এক (æk)エーク
2 ২ দুই (d̪ui)ドゥイ
3 ৩ তিন (t̪in)ティーン
4 ৪ চার (ʧaɾ)チャール
5 ৫ পাঁচ (pãʧ)パーンチ
6 ৬ ছয় (ʧʰɔj)チョイ
7 ৭ সাত (ʃat̪)シャート
8 ৮ আট (aʈ)アート
9 ৯ নয় (nɔj)ノイ
10 ১০ দশ (d̪ɔʃ)ドシュ

ベンガル語11-20

11 ১১ এগারো (ægaɾo)エガーロ
12 ১২ বারো (baɾo)バーロ
13 ১৩ তেরো (t̪æɾo)テエロ
14 ১৪ চৌদ্দ (ʧoud̪d̪o)チョッド
15 ১৫ পনেরো (pɔneɾo)ポネロ
16 ১৬ ষোল (ʃolo)ショーロ
17 ১৭ সতেরো (ʃɔt̪eɾo)ショテロ
18 ১৮ আঠারো (aʈʰaɾo)アタロ
19 ১৯ ঊনিশ (uniʃ)ウニッシュ
20 ২০ বিশ (biʃ)ビシュ
(またはクゥリ)

ベンガル語21-30

21 ২১ একুশ (ekuʃ)エクシュ
22 ২২ বাইশ (baiʃ)バイシュ
23 ২৩ তেইশ (t̪eiʃ)テイシュ
24 ২৪ চব্বিশ (ʧobbiʃ)チョッビシュ
25 ২৫ পঁচিশ (põʧiʃ)ポチッシュ
26 ২৬ ছাব্বিশ (ʧʰabbiʃ)チャッビシュ
27 ২৭ সাতাশ (ʃat̪aʃ)シャタシュ
28 ২৮ আঠাশ (aʈʰʃ)アタシュ
29 ২৯ ঊনত্রিশ (unot̪ɾiʃ)ウノ・トリッシュ
30 ৩০ ত্রিশ (t̪ɾiʃ)トリッシュ

ベンガル語31-40

31 ৩১ একত্রিশ (ekt̪ɾiʃ)エク・トリッシュ
32 ৩২ বত্রিশ (bot̪ɾiʃ)ボ・トリッシュ
33 ৩৩ তেত্রিশ (t̪et̪ɾiʃ)テ・トリッシュ
34 ৩৪ চৌত্রিশ (ʧout̪ɾiʃ)チョー・トリッシュ
35 ৩৫ পঁয়ত্রিশ (pɔjt̪ɾiʃ)ポイ・トリッシュ
36 ৩৬ ছত্রিশ (ʧʰot̪ɾiʃ)チョ・トリッシュ
37 ৩৭ সাইত্রিশ (ʃait̪ɾiʃ)シャイ・トリッシュ
38 ৩৮ আটত্রিশ (aʈt̪ɾiʃ)アッ・トリッシュ
39 ৩৯ ঊনচল্লিশ (unoʧolliʃ)ウノ・チョッリッシュ
40 ৪০ চল্লিশ (ʧolliʃ)チョッリッシュ

ベンガル語41-50

41 ৪১ একচল্লিশ (ekʧolliʃ)エク・チョッリッシュ
42 ৪২ বিয়াল্লিশ (bialliʃ)ビアル・リッシュ
43 ৪৩ তেতাল্লিশ (t̪et̪alliʃ)テタル・リッシュ
44 ৪৪ চুয়াল্লিশ (ʧualliʃ)チュアル・リッシュ
45 ৪৫ পঁয়তাল্লিশ (pɔjt̪alliʃ)ポイタル・リッシュ
46 ৪৬ ছেচল্লিশ (ʧʰeʧolliʃ)チェチョル・リッシュ
47 ৪৭ সাতচল্লিশ (ʃat̪ʧolliʃ)シャッ・チョッリッシュ
48 ৪৮ আটচল্লিশ (aʈʧolliʃ)アッ・チョッリッシュ
49 ৪৯ ঊনপঞ্চাশ (unopɔnʧaʃ)ウノ・ポンチャッシュ
50 ৫০ পঞ্চাশ (pɔnʧaʃ)ポンチャッシュ

規則性はある?

いかがでしょうか。

一見すると、完全に不規則な名称が続いているようにも見えますが、

一応、それなりの規則があります。

一の位を先に言う

この数え方はつまり、「一の位を先に言う」ということです。

21=1+20
22=2+20

という風に、数が進んでいます。

例えば、20は「ビシュ」と言いますが、21~28までは、末尾に「シュ」または「イシュ」が付いています。

これが、「十の位は20です」ということを表しています。

30も、同様です。

30は「トリッシュ」で、31から38まで、末尾に「トリッシュ」がついています。

「一の位を先に言って、次に十の位の数字を言う」

これが、インドの2桁の数の表し方です。

一の位が2のとき

「2」単独では「ドゥイ」と言いますが、

一の位が2のときの「2」は、「バ」「ビ」など、「b」の音に変わります。

一の位が9のとき

面白いのは、一の位が9のときの言い方です。

19は、「ウニッシュ」。

これは、「20マイナス1」という意味です。

同様に、29は「ウノ・トリッシュ」。

これも、「30マイナス1」という意味です。

50までまとめ

以上をまとめると、

・1~18をまず丸暗記する

・19は、20マイナス1で「ウニッシュ」
・20はビシュ
・21~28は、一の位を先に言って、末尾に「シュ」または「ビシュ」を付ける

・29は、30マイナス1で「ウノ・トリッシュ」
・30はトリッシュ
・31~38は、一の位を先に言って、末尾に「トリッシュ」を付ける

・39は、40マイナス1で「ウノ・チョリッシュ」
・40はチョリッシュ
・41~48は、一の位を先に言って、末尾に「チョリッシュ」を付ける

・49は、50マイナス1で「ウノ・ポンチャッシュ」
・50はポンチャッシュ

…と、なります。

この呼び方だと、「20台」の数字は、20から29ではなく、19から28、ということになります。

なぜ一の位を先に言うのか

でも、なぜインドでは、一の位を先に言うのでしょうか。

歴史の中で、メリットがないものは廃れていきますから、

逆に言うと、インド人にとっては、この呼び方にメリットがあるからこそ、存続しているわけです。

暗算に便利

インド人がこういう数詞を使っているのは、

「暗算」の利便性から、だと考えられています。

たとえば、私たちが16+25を暗算するとき、脳内で一の位を先にまとめて、

16+25=(6+5)+10+20

という計算をしますよね。

私たちも、「ちょっと計算してほしい」と言われた時に、

「早く一の位を言って欲しい」と感じることは、ままあります。

つまり、一の位から先に計算するのだから、

「一の位を先に言ってもらえたほうが計算しやすい」

というインドの数え方は、十分、理に適っているわけです。

19が機能的すぎる

また、19を「20マイナス1」と呼ぶのは、かなり機能的です。

たとえば、私たちも、
「19×7」という計算をするとき、

19×7
=(20-1)×7
=20×7-1×7
=140-7
=133

と、計算したほうがラクであることを知っています。

しかし、インドの場合は、19の名前自体をそもそも「20マイナス1」と呼んでいるわけですから、

「20で計算しましょう。しかるのちに1を引きましょう」

というメッセージが、始めから名前の中に込められているわけです。

日本だと、小学校2,3年で教わる計算方法を、インドの子供は「始めから知っている」ってことになります。

そして、59, 69, 79, 89 も、「10マイナス1」という呼び方になっています。

これって、かなり「画期的」なネーミングだと思いませんか?

99だけ例外

上記では省略していますが、51から98までの呼び方も、基本なルールは同じです。

ただし、99だけ例外で、「ニラノ・ボイ」。

99だけは、「100マイナス1」ではなく、

「9と9」という名前です。

これはつまり、「9と9」と言われたら、その時は「99の計算方法で計算しましょう」ということです。

ちなみに99に2桁の数字nを掛ける場合は、

100(n-1)+(100-n)

例)
74×99は「73と26」で、7326

という法則があることをインド人は知っているので、99の掛け算は秒速で計算することが可能です。

まとめ

インドの数字の1から99までの数詞の特徴は、次の3点です。

1、
1から99まで、すべてが不規則な形をしている

2、
一の位を言ってから十の位を言う
(十の位が接尾辞になっている)

3、
19や29など、一の位が9のときは「10マイナス1」という言い方をする



…これらの特徴を知っていれば、複雑なインドの数詞も、多少は覚えやすくなります。

でも、1から99までの数詞に、これだけの情報が詰まっているのですから、

インド人が「世界一数字に強い」と言われているのも、うなずけますよね。



⇒ベンガル語の「百、千」はこちら