語源は、多くの人に人気のある、普遍的なテーマです。
今回は、「中国語からタイ語」に入ったと思われる語彙について、ご紹介していきます。
ただし、
今回の「中国語から入ったと思われるタイ語リスト」は、
あくまでも、僕の主観です(笑)
僕が、タイ語と中国語の語彙を見比べていて、
「あっ、これは似てるな」
と感じたものを、主観的にピックアップしたものなので、
中国語から入ったという「確たる証拠」があるわけではありません。
まぁ、話のネタ程度に聞いておいていただければと思います。
では、見ていきましょう!
ไก่ガイ =鶏(ケイ)
にわとり
ご存知、ゴーガイ(鶏のK)のガイです。
おそらく、タイ族は元々、鶏を家畜化しておらず、
かつて、タイ族の祖先が中国貴州省のあたりに住んでいた頃、
漢民族や周辺民族から、「鶏の家畜化」を教わった可能性があります。
なので、
「ガイ」というタイ語も、中国語の鶏(ケイ)と、語源は同じではないか、という推論が成り立つわけです。
(あくまでも、推論です!)
ชาチャー =茶(チャ)
これはもう、
説明するまでもないでしょう。
タイ語でも、お茶のことは
「チャー」と言います。
ちなみに、今回の記事では、
タイ語の発音と「漢字の音読み」とを比べています。
タイ語が大きく影響を受けているのは、中国南方の潮州語なのですが、
中国南方の潮州語も、漢字の音読みも、わりと音が近いので、
「潮州語と似てる」という言い方をするよりも、「漢字の音読みと似てる」と言った方が、
読者のみなさんが分かりやすいからです。
ขี่キー =騎(キ)
自転車に乗る
タイ語では、「バイクや自転車に乗る」と「自動車に乗る」、
2つの「乗る」の動詞を区別しています。
バイクや自転車、または馬など、またがって乗るものには「キー」という動詞を使います。
これはまさに、漢字の「騎」と意味も発音も同じなので、
「たぶん中国語由来じゃないかな?」と思うわけです。
กี่ギー =幾(キ)
いくつ
「いくつの〇〇」はタイ語で「ギー・〇〇」と言います。
これまた、漢字の幾(几)と、意味も音も使い方もよく似ています。
これは推測ですが、、
たぶん、大昔のタイ語では、
「いくつ」を意味する言葉は、「タオライ」だけだったのではないか?と思います。
「タオライ」は「いくつですか?」と、単独で文になりますが、
「タオライ+個」とか、「タオライ+人」のような、単位を付けて「いくつの○○」という用法はありません。
でも、「いくつの○○」が言えないと、若干不便ですよね。
そこへ、中国語の「幾個(=何個)」「幾人(=何人)」という風に、
単位をつけて「いくつの○○」と尋ねる言い方
が入ってきました。
「これは、なんと便利な言い方なんだ!」
ということで、中国語の幾(几)の漢字表現を、そのまま「ギー○○」というタイ語に借用したのではないか、と思います。
ขิงキン =姜(きょう)
しょうが
タイ語で生姜のことは、「キン」と言いますが、
これも、中国語の「姜・きょう」と似てますよね。
三国志ファンの人は、「姜」の字を見ると、
諸葛亮の後継者の「姜維」を思い出すのですが、
「姜」の字には、「生姜(しょうが)」の意味があります。
「パット・キン(生姜炒め)」は、タイ屋台料理の人気メニューの1つです。
แขกケェーク =客(きゃく)
タイ語では、お店の商売の客と、家に尋ねて来るお客とを区別します。
おうちの客は、ケェーク
と言います。
このうち、「ケェーク」は、漢字の「客」と意味も発音も全く同じなので、
たぶんこれも、中国語から借りたのだろうと思います。
สีスィー =色(しき)
いろ
タイ語で色は「スィー」と言いますが、
よくよく考えてみると、「色」という言葉は、「概念的」な言葉です。
つまり、民族の原始的な段階では、
「赤い」とか「黒い」とかの、見てすぐに分かる言葉が初めにあって、、
その後、文明が発展してから、
「こういうのって、まとめて何て言うの?」
という概念的な考えが生まれて、そこではじめて
「色」という言葉が生まれます。
なので、
「色」という集合的な概念は、ある程度高い文明から借りた可能性があるので、
タイ語の「スィー」は中国語の「色(しき)」が由来じゃないかな、と思うわけです。
เส้นセン =線(セン)
これはもう、そのまんまです。
線状のものを、
タイ語でも「セン」と言います。
เชียงチアン =城(じょう)
お城、城壁
タイの北部から、ミャンマーのシャン州、中国雲南省にかけてのエリアには、
チェンマイ、チェンライなど、頭に「チェン」がつく地名が多くあります。
これは、中国語の「城」が由来じゃないかな、と考えています。
おそらく、
当時のタイの王様が、漢民族の「城壁」に学んだのかもしれません。
中国語の「城」の概念は、「城壁に囲まれた街」という意味なので、
この辺も、タイ北部のチェンマイやチェンセーンのような、
赤レンガに囲まれた城壁の街のイメージとよく似ている、と感じるわけです。
เก้าอี้ガオイー =高椅(こうい)
いす
イスはタイ語でガオイーと言います。
中国語では、
風呂で使うような座高の低いイスと、教室にあるような座高の高いイスとを、区別して呼びます。
このうち、「椅」の漢字は、高い方のイスを表します。
なので、
中国人の使う高椅(こうい)がそのまま、タイ語のガオイーになったんじゃないかな、と思います。
โต๊ะトッ =卓(たく)
つくえ
机はタイ語で「トッ」と言いますが、
これもたぶん、元は中国語です。
純粋のタイ語の語彙には、こういう発音(無気音の第4声)の語は少ないからです。
ก๋วยเตี๋ยวクイティアオ =粿條(かじょう)
米の麺
有名なタイラーメンのクイティアオですが、
これも、潮州料理の粿條(かじょう)に由来しています。
クイティアオと潮州語の由来については、
【こちらの記事】でも紹介しています。
ซาลาเปาサラパオ =沙包(しゃーぱお)
肉まんあんまん
タイでは、肉まんあんまんのことをサラパオと言います。
これまた、中国語の「包(パオ)」とよく似ています。
台湾へ行くと、町の路上にはたくさんの屋台が並んでいますが、
そのうち、「肉まんあんまん」のお店の看板に、
「沙包(しゃーぱお)」
と書いてあることがあります。
なので、たぶん、この「沙包(しゃーぱお)」が、
タイ語のサラパオの語源ではないかな、と思います。
ปาท่องโก๋パートンゴー
=白糖糕(パイタンガオ)
タイの屋台のお菓子に、「ปาท่องโก๋パートンゴー」という名前の揚げパンがあります。
この「ปาท่องโก๋パートンゴー」という言葉も、潮州語起源です。
中国の北京語で白糖糕(パイタンガオ)と呼ばれている、「蒸しパン」のようなお菓子がありますが、
潮州語ではパートンゴーという発音になり、それがタイへと伝えられ、「ปาท่องโก๋パートンゴー」になりました。
ただし、中国の白糖糕(パイタンガオ)は蒸しパンなので、
タイの揚げパンの「ปาท่องโก๋パートンゴー」とは、製法が違います。
ซีอิ๊วスィーイウ =醤油(しょうゆ)
これも、説明は不要でしょう。
タイ語では醤油のことを「スィーイウ」と呼びますが、
この「スィーイウ」は、
日本や中国の「醤油(しょうゆ)」とほぼ同じものです。
เย็นตาโฟイェンターフォー =釀豆腐(じょうとうふ)
タイ料理には、この画像のようにスープが真っ赤な麺料理があり、
「イェンターフォー」と言います。
これは、沖縄料理にもある、赤く発酵させた豆腐を使った辛味と酸味の効いた食材で、
これをスープに溶かした麺料理が、イェンターフォーです。
タイ語では、イェンターフフォー、中国語でこのダシのことを釀豆腐(じょうとうふ)というので、
同じものを指していると思われます。
意外に多い、中国語由来のタイ語
さて、今回は、
「中国語から借りたと思われるタイ語単語」
というテーマで、ざっと思いつく限り、挙げてみました。
ชาチャー =茶(チャ)
ขี่キー =騎(キ)
กี่ギー =幾(キ)
ขิงキン =姜(きょう)
แขกケェーク =客(きゃく)
สีスィー =色(しき)
เส้นセン =線(セン)
เชียงチアン =城(じょう)
เก้าอี้ガオイー =高椅(こうい)
โต๊ะトッ =卓(たく)
ก๋วยเตี๋ยวクイティアオ =粿條(かじょう)
ซาลาเปาサラパオ =沙包(しゃーぱお)
ปาท่องโก๋パートンゴー =白糖糕(パイタンガオ)
ซีอิ๊วスィーイウ =醤油(しょうゆ)
เย็นตาโฟイェンターフォー =釀豆腐(じょうとうふ)
こうして列挙してみると、、
「意外と多いなぁ」
って思いませんか?
たぶん、探せばまだまだもっとあると思います。
特に、醤油(スィイウ)や粿條(クイティアオ)、白糖糕(パートンゴー)など、
中国の「食材系」は、そのまんま中国語で呼んでいます。
タイを旅行しながら、「あれ、この単語、なんか中国語っぽいぞ⁉」と考えて、
遠き昔の語源の世界に思いを馳せてみるのも、面白いんじゃないかな、と思います。
それに、こういう語源的な豆知識は、「正しいかどうか」はじつはあんまり重要ではありません。
(そもそも証明のしようがありません)
なので、話のネタ程度に読んでいただければと思います。
ただ、「このタイ語の単語は漢字の読みと似てる」と考えておいたほうが、暗記の際の手助けになり、
結果的に、タイ語も中国語も、スムーズに覚えられる、というわけです。
今回は、「中国語から借りたと思われるタイ語単語」のお話でした。