今回は、日本語のアクセントについてのお話。
先日、タイの人気俳優のPerthさんが、
とても興味深いお話をされていました。
それは、Perthさんが、
というもの。
動画配信の中で、Perthさんは、
と言われていました。
この話は、一般の日本人にとっては、「ただ単にアクセントの違いを言っているだけ」と思われるかもしれませんが、
そこは、語学の天才Perthさん。
そんな単純な話ではありません。
じつは、
言語学の観点から見ると、
今回のアクセントの話は、
とても深いテーマなのです
アクセントとは
アクセントというのは、
音を高く読んだり低く読んだりして、
高さに変化をつけることを言います。
例えば、
「雨」と「飴」、
「橋」と「箸」などの言葉は、
ひらがなで書くと同じですが、
それぞれ、高く読む場所(アクセント)が違います。
「飴」 あ↓め↑ 低高
このように、
日本語は、単語ごとにアクセントが決まっていて、
意味の違いを表すことも多いです。
複合語になるとアクセントの位置が変わる
そして、
日本語には、「複合語になるとアクセントの位置が変わる」という、非常にややこしい特徴があります。
先ほどの「雨」を例にとると、
「雨」 あ↑め↓ は高低ですが、
後ろに「女」を付けて、
「雨女」あ↓め↑お↑ん↓な↓ になると、
アクセントは、
低高高低低になります。
つまり、
同じ「雨」という言葉なのに、
「雨」単体では、アクセントは高低、
しかし、
「雨」の後ろに別の言葉が続いて
「雨~」になると、
アクセントは、低高になる、
ということです。
複合語のときに変化する。
ここが、日本語の難しいところです。
「タイ」と「タイ語」
では次に、
今回のテーマ、
「タイ」という単語を例にとって考えてみましょう。
日本語の「タ↑イ↓」は、「タ」が高くて、「イ」が低いので、
アクセントは「高低」です。
高低の順で、「タ↑イ↓」と発音します。
そして、
この後ろに「語」という言葉をつなげて、
「タイの言語」と言いたいとします。
ここで、外国の人は、まさか「タイ」のアクセントが変化するなんて夢にも思いませんから、
「タ↑イ↓」という「高低」のアクセントのまま、後ろに「語」を付けて、
「タ↑イ↓語↓」
と発音しようとします
アクセントの位置を変えない「タ↑イ↓語↓」という発音、
おそらく、Perthさんも、これを使っていたのだと考えられます。
これが、先日のPerthさんが言われていた、「間違った」発音です。
でも、
これだと、アクセントが上下するので、
日本語としてはかなり不自然です。
実際のアクセントは、
「タ↓イ↑語↑」で、
低高高です
なんと、
「タイ」と言う時と「タイ語」と言うときとで、アクセントが変わっているのです。
同じ「タイ」という国名にもかかわらず、です。
どうでしょう、
あなたはこのことを知っていましたか?
複合語のアクセント
「タ↑イ↓」と、「タ↓イ↑語↑」は、アクセントの位置が違う。
こういうことは、日本の学校でも習わないので、
ほとんどの日本人は気がついていません。
しかし、、
「アクセントを変える」なんていう複雑なことを、
日本人は無意識のうちにやっているのです
日本語には、
という法則があります。
そのため、もしも高いところが2つあった場合は、2単語です。
先ほどの雨女の例でいうと、
「あ↑め↓」「お↓ん↑な↑」
と発音すれば、2単語です。
(=雨と女、2単語)
しかし、
「あ↓め↑お↑ん↓な↓」と発音すると、
複合語になるので、
1単語、ということになります。
(=雨女、1単語)
2単語なのか、それとも、複合語で1単語になっているのか。
日本語は、これをアクセントで区別しているわけです。
なんとも複雑なシステムです。
「中↑国↓」と、「中↓国↑語↑」
では、タイ語と同じ例を、もう1つ考えてみましょう
「中国」という単語も、タイと同じく、
初めが高くて、その後が低い、
高低低のアクセントになっています。
しかし、
これに「語」をつけて
「中国語」にすると、、
やはり、「タイ語」の時と同じように、
頭が低くてその後ろが高い、
「中↓国↑語↑」という発音になります。
「タ↑イ↓」と、「タ↓イ↑語↑」
という風に、アクセントのパターンは同じです。
また、「大使館」という言葉を続けるときも、同様です。
「中↓国↑大↑使↑館↓」
やはり、頭が低くてその後ろが高いアクセントになっているのです。
まとめ
以上をまとめると、、
②これに「語」や「大使館」など、別の単語をつなげて複合語になった時は、また別のアクセントになり、元の単語の時とアクセントが変わる
ということです。
「日本語は世界一難しい言語」とよく言われますが、
その理由は、決して、ひらがなや漢字がある、という点だけではありません。
今回お話ししている、
アクセントの問題もかなり大きいのです。
単語ごとにアクセントがあって、
そこには法則性がなく、
しかも、
複合語になったらまたアクセントが変わる、
というとても複雑なシステム。
こんなの、外国人にはめちゃくちゃ難しいです。
単語一つの時のアクセントと複合語になった時のアクセント、両方を覚えないといけません。
「タイ」や「中国」などの単語をせっかく覚えても、これに「語」とか「大使館」とか別の単語をつなげて複合語を作ると、またアクセントが変わってしまうからです。
そのため、多くの外国の人は、なかなかこのアクセント変化まではマスターできません。
結果、不自然な日本語になります。
外国の人が話す日本語のアクセントに、
我々日本人が違和感を覚えるのはこのためです。
冒頭でご紹介したタイ俳優のPerthさんは、
英語や日本語など、多くの言語に堪能で、
「語学の天才」として知られています。
なので、
アクセントの位置が違うことに自分で気がついて、自分で矯正をされていますが、
普通はこんなこと、
なかなか気がつきません
Perthさんは、さすが語学の天才、ということなのだと思います。
しかし、逆に言うと、、
こんなにも複雑なアクセント体系を持つ日本語を、
我々日本人は無意識のうちに習得しているのですから、
外国語の発音や声調も、習得できないはずはありません
ぜひみなさんも、外国語の学習に、積極的に取り組んでいきましょう!