日本語が難しいのは漢字だけではない!~アクセントの難しさ

sasint / Pixabay

今回は、日本語のアクセントについてのお話。

先日、タイの人気俳優のPerthさんが、
とても興味深いお話をされていました。



それは、Perthさんが、

「タイ語」という言葉のアクセントを、間違えて覚えていた

というもの。



動画配信の中で、Perthさんは、

「これまで自分はタイ語という言葉を、タ↑イ↓語↑と発音していたけれど、正しくは、タ↓イ↑語↑だった、と気づいた」

と言われていました。



この話は、一般の日本人にとっては、「ただ単にアクセントの違いを言っているだけ」と思われるかもしれませんが、

そこは、語学の天才Perthさん。
そんな単純な話ではありません。



じつは、

言語学の観点から見ると、
今回のアクセントの話は、
とても深いテーマなのです


アクセントとは

アクセントというのは、
音を高く読んだり低く読んだりして、
高さに変化をつけることを言います。



例えば、

「雨」と「飴」、
「橋」と「箸」などの言葉は、

ひらがなで書くと同じですが、
それぞれ、高く読む場所(アクセント)が違います。


「雨」 あ↑め↓ 高低
「飴」 あ↓め↑ 低高



このように、

日本語は、単語ごとにアクセントが決まっていて、
意味の違いを表すことも多いです。


複合語になるとアクセントの位置が変わる

そして、

日本語には、「複合語になるとアクセントの位置が変わる」という、非常にややこしい特徴があります。



先ほどの「雨」を例にとると、

「雨」 あ↑め↓ は高低ですが、
後ろに「女」を付けて、
「雨女」あ↓め↑お↑ん↓な↓ になると、

アクセントは、
低高高低低になります。



つまり、

同じ「雨」という言葉なのに、
「雨」単体では、アクセントは高低、

しかし、

「雨」の後ろに別の言葉が続いて
「雨~」になると、
アクセントは、低高になる、

ということです。


単語のアクセントが、
複合語のときに変化する。

ここが、日本語の難しいところです。


「タイ」と「タイ語」

では次に、
今回のテーマ、

「タイ」という単語を例にとって考えてみましょう。



日本語の「タ↑イ↓」は、「タ」が高くて、「イ」が低いので、

アクセントは「高低」です。

高低の順で、「タ↑イ↓」と発音します。



そして、

この後ろに「語」という言葉をつなげて、
「タイの言語」と言いたいとします。



ここで、外国の人は、まさか「タイ」のアクセントが変化するなんて夢にも思いませんから、

「タ↑イ↓」という「高低」のアクセントのまま、後ろに「語」を付けて、

「タ↑イ↓語↓」
と発音しようとします


アクセントの位置を変えない「タ↑イ↓語↓」という発音、

おそらく、Perthさんも、これを使っていたのだと考えられます。

これが、先日のPerthさんが言われていた、「間違った」発音です。



でも、

これだと、アクセントが上下するので、
日本語としてはかなり不自然
です。

実際のアクセントは、
「タ↓イ↑語↑」で、
低高高です



なんと、

「タイ」と言う時と「タイ語」と言うときとで、アクセントが変わっているのです。

同じ「タイ」という国名にもかかわらず、です。



どうでしょう、
あなたはこのことを知っていましたか?

複合語のアクセント

「タ↑イ↓」と、「タ↓イ↑語↑」は、アクセントの位置が違う。

こういうことは、日本の学校でも習わないので、
ほとんどの日本人は気がついていません。


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しかし、、

「アクセントを変える」なんていう複雑なことを、
日本人は無意識のうちにやっているのです



日本語には、

「1単語の中にアクセントが高いところは1か所しかない」

という法則があります。



そのため、もしも高いところが2つあった場合は、2単語です。

先ほどの雨女の例でいうと、

「あ↑め↓」「お↓ん↑な↑」
と発音すれば、2単語です。

(=雨と女、2単語)



しかし、

「あ↓め↑お↑ん↓な↓」と発音すると、
複合語になるので、
1単語、ということになります。

(=雨女、1単語)



2単語なのか、それとも、複合語で1単語になっているのか。

日本語は、これをアクセントで区別しているわけです。

なんとも複雑なシステムです。


「中↑国↓」と、「中↓国↑語↑」

では、タイ語と同じ例を、もう1つ考えてみましょう

「中国」という単語も、タイと同じく、
初めが高くて、その後が低い、
高低低のアクセントになっています。



しかし、

これに「語」をつけて
「中国語」にすると、、

やはり、「タイ語」の時と同じように、
頭が低くてその後ろが高い、
「中↓国↑語↑」という発音になります。


「中↑国↓」と、「中↓国↑語↑」
「タ↑イ↓」と、「タ↓イ↑語↑」

という風に、アクセントのパターンは同じです。



また、「大使館」という言葉を続けるときも、同様です。

「タ↓イ↑大↑使↑館↓」
「中↓国↑大↑使↑館↓」

やはり、頭が低くてその後ろが高いアクセントになっているのです。


まとめ

以上をまとめると、、

①日本語の単語には、「タイ」「中国」など、単語単体で言う時のアクセントがある

②これに「語」や「大使館」など、別の単語をつなげて複合語になった時は、また別のアクセントになり、元の単語の時とアクセントが変わる

ということです。



日本語は世界一難しい言語」とよく言われますが、

その理由は、決して、ひらがなや漢字がある、という点だけではありません。

今回お話ししている、
アクセントの問題もかなり大きいのです。



単語ごとにアクセントがあって、
そこには法則性がなく、

しかも、

複合語になったらまたアクセントが変わる、
というとても複雑なシステム。



こんなの、外国人にはめちゃくちゃ難しいです。

単語一つの時のアクセントと複合語になった時のアクセント、両方を覚えないといけません。

「タイ」や「中国」などの単語をせっかく覚えても、これに「語」とか「大使館」とか別の単語をつなげて複合語を作ると、またアクセントが変わってしまうからです。



そのため、多くの外国の人は、なかなかこのアクセント変化まではマスターできません。

結果、不自然な日本語になります。

外国の人が話す日本語のアクセントに、
我々日本人が違和感を覚えるのはこのためです。



冒頭でご紹介したタイ俳優のPerthさんは、
英語や日本語など、多くの言語に堪能で、
「語学の天才」として知られています。

なので、

アクセントの位置が違うことに自分で気がついて、自分で矯正をされていますが、

普通はこんなこと、
なかなか気がつきません

Perthさんは、さすが語学の天才、ということなのだと思います。



しかし、逆に言うと、、

こんなにも複雑なアクセント体系を持つ日本語を、
我々日本人は無意識のうちに習得しているのですから、

外国語の発音や声調も、習得できないはずはありません

ぜひみなさんも、外国語の学習に、積極的に取り組んでいきましょう!


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