読めば納得!タイ文字が「複雑で難しい」と言われる5つの理由

質問01

タイ語は、「文字が非常に複雑で難しい」と言われています。

おそらく、タイ文字を少しでもかじったことのある人であれば、10人中9人以上は、そのように答えるはずです。

では、具体的に、「どの辺が難しいのか」というのが、今回のテーマです。

質問:
タイ文字は、なぜそんなにも「複雑で難しい」と言われているのか

ポイントは、5つあります。

1.声調の記号が絶対的ではない

タイ語には、音の高低や上げ下げで意味を区別する、「声調」というシステムがあります。

例えば、

ヤー(-)と平らな音で読めば「薬」

ヤー(^)と落ちる音で読めば「草」または「おばあちゃん」

といった具合です。

もうこの時点で、すでにかなりややこしいです。

文字ごとに声調のルールが違う?

そして、タイ文字では、

数字のような「記号」をつけて、声調を表すのですが、

この記号が「絶対的ではない」というのが、これまた難しいところです。



「絶対的ではない」

とはどういうことかというと、例えば……

ท้า ถ้า

どちらも、上に数字の「2」が付いていて、これが声調を表しているのですが、

この2つは、読み方が同じではありません。

ท้า ถ้า

左側の「ท้า」は、
高く上がる音で読み、

右側の「ถ้า」は、
落ちる音で読みます。

これはつまり、文字ごとに、声調のパターンが違う、ということです。

文字ごとに声調のルールを覚えなくてはならない

そのため、タイ語の学習者は、

声調記号のパターンを、「文字ごと」に覚えなくてはなりません。

これがつまり、声調の記号が「絶対的ではない」ということです。

なんとも複雑で、非合理極まりない話です。

もしも絶対的だったら…

もしも、声調記号が絶対的で、

・記号1なら必ずこの音
・記号2なら必ずこの音

という風に決まっていたなら、タイ文字はもっと学習しやすかったと思います。

実際、お隣のミャンマー文字では、そのように記号が「絶対的」になっています。



しかし、タイ文字の声調記号は絶対的ではないため、

文字ごとに、声調のパターンを覚えなくてはならない、ということです。

2.分かち書きをしない

または、タイ文字は、「分かち書き」をしません。

分かち書きとは、英語などのヨーロッパ系言語で見られるような、

単語ごとに間を上げて書く、というシステムです。

例)
I’ve never been to me.
(本当の私に出会えたことなんて一度もなかったのよ)

これは、見た瞬間に単語の切れ目が分かりますので、非常に合理的です。

タイ文字は間を空けずに書く

しかし…

タイ文字では、単語と単語の間を空けませんので、1つの文章を、ずっと続けて書きます。

例)
มีสุขสมมีผิดหวังหัวเราะหรือหวั่นไหวเกิดขึ้นได้ทุกวัน
(喜びと絶望、笑いと恐怖はいつでも訪れる)

そのため、単語を知らないと、「どこで切れるのかがわからない」ということです。

これは、初学者にとっては、あまりにも複雑で、ハードルの高いポイントだといえます。

3.同じ読みを持つ文字が複数ある

また、タイ文字には、同じ音を持つ文字が複数あります。

たとえば、

次の文字は、6つとも「th」の音を持っています。

ฐ ฑ ฒ ถ ท ธ

これまた、何とも非合理的です。



タイ文字は現在、トータルで42文字ありますが、

thの文字が6つもあるということは、「全体の1/7がth」ということですから、

暗記のための労力が、無駄に増えてしまいます。

また、単語を覚える際も、

「あれっ、このthは、どのthの文字だっけ?」

ということに頭を回さなくてはなりません。

もしも1対1だったら…?

もしも、同じ読みの文字をすべて省略して、「1つの音には1つの文字」という風にすれば……

実は、タイ文字は、20数文字もあれば足ります。



実際、お隣のラオスでは、そのようにしていますので、

ラオス文字は、20数文字しかありません。

つまりタイ文字は、同じ読みの文字が複数あるために、覚える項目が「無駄に多い」というわけです。

4.組み合わせの母音記号が多い

タイ語では、文字の上下左右に母音の「記号」をつけて、母音を表します。

これだけでも十分ややこしいのですが、さらにややこしいのは…

この母音記号が複数組み合わさると、別の音になる、という点です。



例えば、

[ เ ] この記号が子音文字の左につくと、「エー」の音になりますが、

[ เ า ] このように、2つの記号で子音文字の両側を挟むと、これで「アオ」という音になります。

例)
เก ゲー
เกา ガオ

「アオと読む」なんて、元の「エー」からは、想像もできませんよね。

覚える項目が多すぎる

そのため、タイ文字の学習では、一つ一つの母音記号を覚えるだけでなく、

「母音記号が組み合わさった時の読み方」

というものも、別途覚えなくてはならないんです。



しかも、慣れないうちは、「組み合わせて読むのか、単体で読むのか」が判然としないこともよくあり、

これも、初学者にとって、かなり複雑でややこしいポイントだといえます。

5.文字に比べて会話が簡単すぎる

また、タイ語特有の現象として…

「文字に比べて会話が簡単すぎる」

という点が挙げられます。



もちろん、外国語ですから、簡単ではないのですが、

それでも、複雑なタイ文字の習得に比べれば、はるかに容易です。

カタコトで会話が成立する

タイに行った事のある人なら分かると思いますが、

アロイ、アロイ!
おいしい、おいしい!

ソヮイ、ソヮイ!
きれいだ、きれいだ!

サバーイ、サバーイ!
元気だ、元気だ!

…等々、単語を適当に並べれば、それで十分、会話が成立してしまうようなところがあります。



また、当のタイ人自体が、「マイペンライ」で大らかな性格ですから、

外国人のカタコトのタイ語を、それなりに理解して、処理してくれます。

そして、旅行や短期間の滞在なら、それで十分、タイ生活が成り立ちます。

こうなると…

わざわざ大変な思いをしてまで、「タイ文字を習得したい」という思いを、なかなか維持しにくいわけです。

他の外国語なら…?

もしも、フランス語やドイツ語などのヨーロッパ系の言語のように、

「会話も読み書きも、同じぐらい難しくて、どちらも必要」

というような場合だと、会話の練習もしつつ、読み書きも学習する、という勉強法が成り立ちます。



しかし、タイ語は…

会話と読み書きの難易度が「アンバランスすぎる」ので、余計に文字が「複雑で難しい」と感じてしまうわけです。

15:85

私の実感としては…

タイ語学習における、会話と読み書きの「労力」の比率は、

「15:85」ぐらいです。



つまり、

会話の練習は、タイ語の勉強全体の15パーセント。

これに対し、タイ文字習得のための労力は、85パーセントぐらい、ということです。

会話が1ヶ月なら、文字は半年

仮に、タイ語の勉強に「100日」をかけるとすれば、

会話は、15日で習得できるのに対し、

タイ文字は85日かかる、ということです。



そして、

会話練習が1ヶ月なら、
文字学習は半年、

といったところです。

これが、「15:85」ということで、

タイ文字学習の敷居が、ますます高くなってしまっている要因の1つです。

だからみんな会話優先になる

タイ在住外国人で、

「タイ語の会話はペラペラなのに、読み書きは一切できない」

という人が多いのは、このためです。

また、このブログ自体、

タイ語会話関連の記事は多いのに、タイ文字関連の記事が少ないのも、それが理由です。



要は、タイ文字は複雑すぎて、

1ページや2ページぐらいのブログ記事ではとてもエッセンスを収めきれない、ということなんです。

また、こうした事情から、

当ブログでは、タイ語会話に関連する一般公開の記事とは別に、

「タイ文字習得講座」というものを、別途開設している、というわけです。

まとめ

今回は、「タイ文字が複雑で難しいといえる理由」と題し、

1.
声調の記号が絶対的ではないため、文字ごとに声調を覚えなくてはならない

2.
分かち書きをしないため、単語を知らないと文章が読めない

3.
同じ読みを持つ文字が複数あるため、音だけを聞いても文字が確定できない

4.
母音記号の組み合わせが多いため、それらをすべてを覚えなくてはならない

5.
タイ語学習の労力の比率は、
会話15:文字85。
会話が容易に成立してしまうため、文字学習のモチベーションを維持しにくい

…以上のポイントについて、ご紹介してきました。



いかがでしょう。

「やっぱり、タイ文字は複雑で難しいっ!」

ということがお分かりいただけたのではないでしょうか。



逆に言えば、

タイ語の場合は、「とりあえず会話だけ練習する」という勉強法が向いています。

前述の通り、会話と文字の難易度の比率は、「15:85」ぐらいだからです。

もしも、「これからタイ語を勉強してみたい!」とお考えの方は、

まずは、日常会話の練習からスタートしてみましょう。

そして、その上で、

「明確な意思と目的があれば、タイ文字も覚えてみる」という順序が、効率的です。



また、当サイトでは、タイ文字学習を志す読者のために、

スキマ時間の動画学習でタイ文字を習得できる「タイ文字動画講座」を開講しています。

講座では、上記でお話ししたような「タイ語の難解なポイント」についても、詳しく解説していますので、

関心のある方は、そちらもご覧になってみてください。



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