AKB48の姉妹グループである、タイのBNK48は、
今や、タイの「国民的アイドル」として、
絶大な人気を博しています。
BNK48の人気が、タイでこれほどまでに高まっているのには、いくつかの理由が考えられます。
そこで、今回から数回に分けて、BNK48がタイで大成功を収めている「本当の理由」について、考察していこうと思います。
日本発だから?
もちろん、BNK48が、「日本発のアイドルグループだから」というのも、理由としてはあります。
元々タイは、世界屈指の「親日国」ですから、
「日本発」というだけでも、すでに大ヒットの可能性を秘めています。
しかし、BNK48に関して言えば、「日本発だから」という理由だけではありません。
日本発というだけでは生き残れない
実際のところ、
タイではこれまでからも、「日本っぽい芸能グループ」というものは、数々生み出されてきました。
日本っぽい曲を歌う歌手、日本のビジュアル系を意識したバンド、日本のセク シー アイドル路線で売り出した歌手…などです。
近年でいえば、「ねこジャンプ」などは、記憶に新しいですよね。
ねこジャンプは、「日本風」を意識した、タイのアイドルです。
歌詞の中にも日本語を取り入れたり、日本でのミニライブを行なったりなど、
かなり「日本寄り」の活動を続けてはいたのですが、「国民的アイドル」にまでは至りませんでした。
BNK48の大人気の理由
では、こうした「日本を意識した、日本寄りの芸能人」たちになくて、BNK48だけにある要素は、一体何なのでしょうか。
私は、いくつかの理由を考えています。
1つ目は、BNK48が、「超美人」の集団ではないこと、
そして、「推し」の概念が形成されたことです。
超美人の需要は少ない
ご存知の通り、日本のアイドル文化は、「クラスにいそうな可愛い子」というものが基本コンセプトです。
もともと、「超美人はアイドルとして成功しにくい」という鉄則があります。
タイでこれまで売り出されてきたアイドルというのは、
そのほとんどが「超イケメン・超美人」たちばかりでした。
でも、タイは、もともと美男美女の多い国です。
なので、ハッキリ言い切ってしまうと…
「超イケメン・超美人」は、タイではそこまで需要がないんです。
結果として、タイでは…
「超イケメン・超美人」が発掘される。
↓
デビュー時は大ヒットするが、間もなく国民に飽きられる。
という悪循環を、これまでから幾度となく、繰り返してきました。
美人さで競う必要がない
しかし、日本のアイドル文化というものは、「クラスにいそうな可愛い子」というものが、基本コンセプトです。
要は、「普通か、普通よりちょっと可愛い子」ということです。
そこには、「勝敗」がありません。
こうなると、
たとえ、BNK48よりも美人のアイドルが出てきても、「負ける」ことはありません。
そもそもBNK48は、超美人の集団ではないのですから、「美人さ」で競う必要が初めから無い、ということです。
これは、タイではかなり大きかったと思います。
モバイル推しは、モバイル推しを辞めない
そして、ここへさらに、「推し」の概念が加わり、BNK48の人気は、より強固なものになっていきます。
たとえば、「恋するフォーチュンクッキー」でセンターを務めた、モバイルという子がいます。
モバイルは、デビュー時は歯の矯正もしていませんでしたし、
どこからどう見ても、「タイのその辺の公立校に通っていそうな、普通の女の子」です。

『恋チュン』のセンター、モバイル
しかし…
BNK48のファンが、一度「モバイル推し」になれば、
そのファンは、ちょっとやそっとのことでは、モバイル推しを辞めません。
なぜなら、初めから「きれいさや可愛さで推しているのではない」からです。
こうしてBNK48は、メンバーの一人一人に、「推し」が付く結果となり、
これに伴って、グループ全体の人気も、不動のものとなっていきます。
タイ語でも「オーシ(推し)」と言う
実は、「推し」という日本語は、タイ語でも、そのまま使われています。
「推し」は、タイ語で、「โอชิ オーシ」と言います。
そして、「誰推し?」と聞くときは、
「โอชิใคร オーシ・カイ?」
と、言います。
(「ใครカイ」は「誰」という意味)
これについては、
『BNK48の影響で、日本語からそのままタイ語になった4つのキーワード』の記事でも紹介しています。
日本発の新しい概念
これはつまり…
日本語の「推し」という言葉が、タイ語には翻訳されずに、
そのまま「オーシ」という形で、タイ語に導入されている
…ってことです。
ちなみに、タイでは製造業が盛んですから、
「カイゼン」とか「カンバン」とか「5S」とかの、日本の現場用語は、タイでも、そのまま使われています。
つまり、「オーシ(推し)」は、
「カイゼン・カンバン・5S」等と並んで、日本からタイへ輸入された、全く新しい概念だということです。
言い換えると、BNK48は、
「タイで初めて、<推し>の概念を定着させたアイドルグループ」
ということです。
これは、かなり重要な要素だと思います。
ちょっと大げさな言い方をすると、
タイ人に「カンバン」を教えたのはトヨタ、
でも、「推し」を教えたのはBNK、ってことになります。
タイ人のファンはすぐ飽きる
一方、推しが無い状態だと、どうなるかというと…
推しの無いただの「ファン」は、いつでもすぐに辞めることができます。
特に、タイ人は飽きっぽいですから、
好みのアイドルのタイプが変わったり、新しい超美人のアイドルが登場したら、途端にファンではなくなってしまうようなところがあります。
タイのアイドル業界は、非常に浮沈が激しく、
また、ファンの側も、今週ファンになったかと思えば、来週にはファンを辞めている、なんてことがよくありました。
そもそも、タイ人自体が、飽きっぽく、忘れやすい国民性ですから、
ヒット曲を1つや2つ飛ばしたぐらいでは、国民の記憶には残りません。
そのため、タイの一般のアイドルは、これまで「国民的アイドル」にはなり得なかったんです。
タイに「○○推しのファン」が増えていく
しかし、「推し」は、そうではありません。
「推し」には、「何があろうとも応援をし続ける」という強い意志があり、
そこには、「美人であるかどうか」という事は、それほど重視されません。

BNK48キャプテン、チャープラン。
不動の人気を誇る。
つまり、
「美人であろうとなかろうと、ダンスが上手でも下手でも、自分は〇〇を応援するっ!!」
というのが、日本語の「推し」に込められた想いです。
そして、こうした「推し」の概念は、
BNK48のヒットの波に連動する形で、国民へと伝播していきます。
気が付けば、「強固な推しの層」が、メンバー全員に形成され、
こうして、BNK48は、国民的アイドルへの階段を登っていくこととなります。
まとめ
まとめると、BNK48には…
●そのため、歌やダンスや外見で、他のアイドルと「優劣」を競う必要がない
●日本の「推し」の文化があり、メンバー1人1人に、推しのファンが大勢いる
●一度「推し」に火が付けば、推しのファンが各自でどんどん盛り立ててくれる
これらの理由から、BNK48は、タイで「頭一つ飛び抜けた存在」として君臨することができ…
結果として、「国民的アイドル」の座を、獲得するに至ったのだと考えられます。
…以上が、1つ目の理由、「推しの文化」です。
次回は、2つ目の理由、「努力の概念」について、お話ししていきます。
(つづく)
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