タイ語で「好き」はチョープ、
「嫌い」は、ギァッと言います。
しかし、こういう覚え方は、実は、あんまりオススメできません。
「好き・嫌い」
「暑い・寒い」
というような言葉を、反対語、または対義語と呼びますが、
私は、初級のうちは、あまりこうした反対語を、覚えようとしないほうが良いと思っています。
今回は、その理由について、お話ししていきます。
反対語を勉強するメリットはあるのか
タイ語を、ネイティブのタイ人と勉強していると、よく、次のような会話をしますよね。
「好き、はタイ語でなんていうの?」
「好き、はチョープといいます」
「じゃあ、嫌いは?」
「嫌い、はギァッといいます」
…みたいな。
これをやると、一見、語彙数は増えるかのように見えますが、
大きな落とし穴が、2つあります。
反対語が適切でないケース
1つ目は、「反対語が必ずしも適切ではない」というケースです。
上記の例で言えば、確かにタイ語で「嫌い」は「ギァッ」というのですが、
「ギァッ」という言葉は、非常に意味の強い言葉です。
タイ人は、「もう二度と顔も見たくない・心底嫌っている」というような相手に対して、「ギァッ」といいます。
一方、日本語の「嫌い」という言葉には、そこまで強いニュアンスはありません。
例えば、日本人が「ピーマンが嫌いだ」と言うときは、
せいぜい、「食べたくない」「食べられない」という程度の意味合いですよね。
もちろん、中には、「ピーマンを見ただけで気分が悪くなる」という人もいますが、
一般的には、それほどの嫌悪感ではなくても、日本人は気軽に「嫌い」という言葉を使います。
食べ物にあまり使わない
一方、タイ人の使う「ギァッ(嫌い)」は、
人の人格や性格、やり方、生き方を嫌う、というような、非常に強いニュアンスがあります。
要は、タイ人は、あんまり食べ物に対して「ギァッ(嫌い)」という言葉を使ったりしないんです。
それなのに、日本人が「ソムタムが嫌いだ」というようなときに、「ギァッ」を使ってしまうと…
「ソムタムに、何か恨みでもあるのか?」
なんて思われてしまいます。
「良い」の反対は?
これと似たような例で、「良い・悪い」があります。
「悪い」をタイ語辞書で調べると、「レーゥ」という言葉が載っています。
これも、先程と同様、非常に意味の強い言葉です。
つまり、日本人が「あの人は悪い人だね」というときの「悪い」と、タイ人が使う「レーゥ(悪い)」は…
まるでニュアンスが違う、ということです。
ですので、安易に反対語を覚えたり使ったりするのは、要注意です。
語彙が無駄に増えてしまう
反対語を覚えるもう一つのデメリットは、単語を覚える労力が増えてしまうことです。
「ディー(良い)」を覚えたその次に、
「レーゥ(悪い)」という言葉を覚えようとしてしまうと…
暗記の労力が、単純に倍になり、
「結局どちらも覚えられない」
なんてことになってしまいがちです。
反対語は覚えなくていい
これら「反対語」に関する問題を解決する、たった1つの方法は…
初級のうちは反対語を覚えようとせず、
「肯定文と否定文」を覚えるようにするのが効果的です。
「好き」を覚えたら「嫌い」を覚えるのではなく…
まずは「好きではない」という否定文を覚えて、
肯定と否定を使いこなせるようにすることのほうが、はるかに重要です。
否定文でカバーしよう
上記の例で言えば、「チョープ(好き)」を覚えたら、
「マイチョープ(好きじゃない)」を覚える。
「ディー(良い)」を覚えたら、
「マイディー(良くない)」を覚える、ということです。
実際のところ、タイ人との会話でも、
「嫌い」よりも「マイチョープ(好きじゃない)」のほうをよく使います。
先ほどご紹介した、「レーゥ(悪い)」という言葉に至っては…
私は、20年間のタイ生活で、おそらく1度たりとも使ったことはありません。
なぜなら、「良い」と「良くない」の2つを知っていれば、十分、生活に支障はないからです。
なぜ反対語を学習させようとするのか
「反対語をセットで覚えましょう」
というのは、おそらく、私たちが子供の頃に、英会話教室や英語の授業でやっていた勉強方法を、そのまま採用しているのだと思います。
hot-cold
big-small
みたいな。
しかし、このやり方は、英語学習には効果があったかもしれませんが、
タイ語のように「サバイバル会話」がメインとなる言語では、あまり向いていません。
特に、タイ語は文法が簡単ですから、初級のうちは、反対語なんて覚えるよりも…
肯定文と否定文を使いこなせることのほうが、よっぽど意味があります。
高いの反対は?
「高い」の反対は「安い」ですが、これも、「高い」の1語だけを完璧に練習したほうが、効率的です。
つまり、「ペェーン(高い)」と「マイペェーン(高くない)」、この2語だけで、初級のタイ語会話は充分だということです。
単語を覚えるためのエネルギーも節約できますし、
また、実際の会話においても、単語がパッと出てきやすくなりますので、非常に効果的です。
まとめ
では、今回ご紹介した、「肯定文と否定文」のセットを、音声で聞き流してみましょう。
↓音声はこちらから
「好き」の反対は、「好きじゃない」
マイチョープ
「良い」の反対は、「よくない」
マイディー
「おいしい」の反対は「おいしくない」
マイアロォーイ
「暑い」の反対は、「暑くない」
マイロォーン
「高い」の反対は、「高くない」
マイペェーン
…と、このように並べてみると…
「反対語」なんてものを覚えるよりも、こちらのほうがわかりやすくて、しかも、より実情に近いと思いませんか?
「反対語は覚えようとせず、否定文でカバーする」
というやり方は、初級のうちは非常に効果的ですので、是非参考になさってみてください。