「#タイ語でダジャレ」というハッシュタグをご存知でしょうか。
これは、最近タイ在住の日本人の間で流行っている、ツイッター上のハッシュタグです。
(ツイッターやインスタなどのSNSで投稿をする際、キーワードの前に「半角シャープ#」をつけて、青字の検索語になっているものを、「ハッシュタグ」と言います)
要は、
「タイ語の単語でダジャレを考えましょう」
というコンセプトで、要は、受験勉強のころにやった「語呂合わせ」のようなものです。
今回は、この「#タイ語でダジャレ」で得られる学習効果、メリットやデメリットなどについて、考察していきましょう。
「タイ語でダジャレ」とは?
タイ語単語のダジャレとは、たとえば、
「名前は何?(チュー・アライ)、荒井注」
みたいに、日本語の発音に似た言葉を当てる、という一種の言葉遊びです。
でも、かつて受験勉強の古文単語や歴史の年号などでで活躍した「語呂合わせ」が、
本当に、タイ語単語でも通用するのでしょうか……??
遊びなら、何でもOK
まず、こういうものを考えるときは、「勉強か、遊びか」を定める必要があります。
遊びなら、何も問題はありません。
遊びでやっていてそれが楽しいなら、効果があってもなくても、別に構わないからです。
その場合は、「楽しさ」がメインになります。
勉強目的なら…?
しかし、「勉強目的」となると、話は別です。
勉強目的なら、「効果」がなくてはなりません。
「効果の有無」、つまり、
この「語呂合わせ」という方法を使って、「覚えにくいタイ語の単語を覚えられる」という効果が実際に期待できるのかどうか、ということです。
学習効果という観点からみると、私は「あまり効果は期待できない」と思っています。
理由は、「3つ」あります。
1.声調までカバーできない
タイ語は、「声調言語」です。
声調言語とはつまり、
ということです。
例えば、
「サーイ」という単語を語呂合わせで覚えるとします。
高めからさらに高く上がる音で発音する
↓
意味:左
サーイ(5声)
低めから尻上がりに発音する
↓
意味:遅れる
タイ語ではこのように、声調が変わると意味が変わってしまいます。
ダジャレや語呂合わせというのは、あくまでも「字面」だけのことなので、
ダジャレで覚えたとしても、結局、最重要の「声調」がインプットできないので、
声調を別途覚えなくてはならない…ということなのです。
2.有気音と無気音、NとNG
また、『タイ文字講座』の中でも触れていますが、タイ語には、声調以外にも、
● NとNG
● LとR
…などの区別があります。
詳しくは、
講座内の動画を見ていただくとして、これも、一朝一夕には身につかない、タイ語発音の難関です。
有名なフレーズとしては、
「カイカイカイカイ」というのがあり、これは、「誰が鶏の卵を売っているのか」という意味です。
↓音声はこちらから
khrai khǎai khài kài
「誰が鶏の卵を売っているのか」
カタカナで書くとすべて「カイ」または「ガイ」と聞こえますが、それぞれ、声調や母音に微妙に違いがあります。
また、これ以外にも、「鶏」「近い」「遠い」は、いずれもカタカナで書くと「ガイ」です。
タイ語単語は、声調や有気音・無気音などの知識がないと、ダジャレだけでは正確に覚えることができないのです。
3.「パ行」とか「ラ行」とかがそもそも日本語には少ない
理由の3つめ。
これも、かなり致命的ですが、
という点が挙げられます。
タイ語は音が豊富で、
「パ行」「バ行」「ラ行(LとR)」「ワ行」など、様々な「音(頭子音)」があります。
しかし、日本語は、そもそも子音の数自体が多くありません。
たとえば、
「ラ行で始まる日本語の単語」
と言われて、一体、いくつの単語が思いつくでしょうか。
おそらく、「らっきょう」や「リンゴ」など、せいぜい数語ではないかと思います。
「パ行」に至っては、
日本語には皆無です。
これはつまり、
ということを意味します。
たとえば、
「民主主義」のことを、タイ語では「プラチャティパタイ」と言います。
「プラ・チャ・ティ・パ・タイ」
と、5音節もありますから、本来は、こういう長い単語こそ、語呂合わせで覚えてしまいたいですよね。
しかし、「プラチャティパタイ」という発音に近い日本語は、ありません。
あえて、語呂合わせをこじつけるなら、人気アニメ『JOJO』に出てくる「ブチャラティ」が近いかな、と思います。
そこで、ブチャラティとプラチャティパタイ(民主主義)との語呂合わせで考えてみると…
↓
ブチャラティ×パッタイ
↓
プラチャティパタイ(民主主義)
とかが可能かもしれませんが、ハッキリ言って、無理がありすぎますよね。笑

もしもブチャラティがパッタイ好きだったら…と想像してみる
「パ行」とか「ラ行」とかは、そもそも日本語に語彙が少ないので、語呂合わせが作れないのです。
結果として、「タイ語でダジャレ」は
語呂合わせを作りやすい「カ行・サ行・タ行」の単語が多くなってしまいがちです。
しかし、これでは単語に偏りができてしまいますから、
「タイ語単語をまんべんなく覚える」ことができないわけです。
メリットは?
以上見てきたように、タイ語の単語は、そもそもダジャレや語呂合わせには向いていません。
語呂合わせでは声調の違いを表せない
②
語呂合わせでは有気音と無気音、NとNG、LとRなどの違いを表せない
③
パ行やラ行など、日本語の語彙に少ない音のダジャレが作りにくい
…などの問題点があります。
少なくとも、「語彙の習得」や「受験勉強」という観点から見ると、語呂合わせを作る効果は薄いと思います。
では、「#タイ語でダジャレ」のメリットはどこにあるのかというと…
それは、勉強よりもむしろ、「話のタネ」「SNS的な楽しみ」だと言うことができるでしょう。
現に、ツイッター内で、タイ在住者やタイ好きのユーザーの間では、「#タイ語でダジャレ」のハッシュタグは、わりと認知されている感があります。
また、ここが大事なところですが…
こうした人気ハッシュタグは、「いいねをもらいやすい」というメリットがあります。
いいねをもらえると励みになりますから、「もっと頑張ろう」という気持ちを維持できます。
これは、何にも勝る「モチベーション」だと言えるでしょう。
まとめ
タイ語単語は、日本語と音韻構成が違いすぎるために、ダジャレや語呂合わせには「向いていません」。
なので、「#タイ語でダジャレ」のメリットの本質は、学習や暗記の効能とかではなく、
「SNS内での共通の話題を探しやすい」
という点にあるのだと思います。
↓
「#タイ語でダジャレ」のハッシュタグをつけてツイートすれば、
↓
同じくタイ語を学習中のユーザーから「いいね」を押してもらえるので、
↓
それが励みになって、またダジャレを考える
↓
タイ語単語を勉強する
↓
上に戻る
…という、好循環です。
余暇や遊びとして、純粋に「話のネタ」と考えれば、
タイ語単語のダジャレや語呂合わせをあれこれと練ってみるのは、楽しいことです。
しかし、それはあくまでも、「話のネタ」に過ぎません。
「ちゃんと勉強する」という観点から言うと、やはり…
ということなのです。
では、本日はこのへんで…
お知らせ
突然ですが、ここでクイズです。 この画像、何と書いてあるか、分かりますか?